(後日加筆)
USCPA(米国公認会計士)をとって経理になり、少なからず海外移住を意識する。
まあその道はなかなか厳しいのだが、移住先の国を考える際に、人口統計をみるとその国での生活や社会状況がイメージできる気がする。
今回、『老人支配国家 日本の危機(文藝新書 2021 エマニュエル・トッド著)』を読んだが、この本は各国の構造を考える際に示唆をあたえてくれる。
「海外移住」自体が”グローバリゼーション”に乗った挙動と思える一方、
著者は”グローバリゼーション”に異なった角度から光を当てて分析されていて、
“グローバリゼーションファティーグ(疲れ)”という表現を用いてその軋みも語ってくれる。
本書を読むと、、頭の中を揺さぶられるというか、一歩立ち止まり、自分の”海外移住思考”を問い直す良い機会をくれる。
やっぱり子供も複数人いると、勢いで進めることもできず、子供が仮にその社会に長くいる時にしっかりと教育を受け、社会の溶け込めるかまでしっかり考えないとなと思う。
読んでいて関心を持った点について記しておく。
読書ログ
※一部ネタバレを含みますが、原書の該当ページを示します。
・ここ数年の米国の外交姿勢を論述した箇所で、今後新聞読む際の参考にしようと思った点。中国の台湾問題にも触手を伸ばしているようにも見える。
”外交面で米国の病的なナショナリズムが発現しているのは、実は、世界各地で米国がかつての影響力を失い、客観的には敗北を続けているから・・中略・・・世界各地での衰退のせいで、米国はかえって硬直化し、攻撃的な意味でのナショナリズムの発作を起こしているのです・・中略・・現在の米国の姿は、植民地を喪失する前前夜の英国やフランスを彷彿とさせる”
前出書 P53/ 前出著者 ※一部中略等した
・次は日本人への記述。こういった秩序だった点は良い点として心地よいのだけど、同質性から息苦しさも感じるというか。でも逆に移民に寛容な環境にいった時に自分は無秩序を受け入れられるのかも疑問っちゃ疑問。本書を読むとそういう自分の日本人臭さも意識される。
”日本人は、異質な人間を憎んでいるというより、仲間どうしで互いに配慮しながら摩擦を起こさずに暮らすのが快適で、そうした完璧な状況を壊したくないだけなのでしょう。・・中略・・出生率をあげると同時に移民を受け入れることには、”不完全さ”や”無秩序”をある程度、受け入れる必要があります。子供を持つこと、移民を受け入れること、移民の子供を受け入れることは、ある種の”無秩序”を受けれることだからです”
”フランスの場合、誰もが身勝手です(笑)。もともと”無秩序”なのですから、移民受け入れを誰も不安視しませんでした”
前出書 P71/ 前出著者 ※一部中略等した
・移住先に溶け込めるかどうかを検討する上で、参考になると思われた点。受け入れ国側のスタイル・主義について。その社会に自分の子供世代も含め同化したいと思う社会が見つけられるだろうか(住めば都か)。
移民受け入れに必要なのは、「多文化主義」ではなく「同化主義」です。「多文化主義」とは、「同化主義」よりも聞こえが良いですが、要するに「移民隔離」政策です。・・中略・・かつて英国やドイツが多文化主義を唱え、「移民を無理に統合させようとせず彼らの自主性に任せる」という政策を採りました。しかし、結局うまくいきませんでした。・・中略・・大部分のフランス人は、「外から来た人はフランス人になるべきだ」と考えます。・・中略・・こうして肌の色はさまざまでも、習俗的にはかなり均質的な「フランス人の子供」が育っていきます
前出書 P75/ 前出著者 ※一部中略等した
・海外移住先No1は米国だったと記憶しているがその米国の家族構造への分析。米国駐在のオファーは受けたことは数回あったが、格差社会の上に上がっていけるイメージがわかず、いずれ日本に帰ってくるだろうなと思っていた。子供の学費を払えるイメージがわかない(苦笑)。
アングロサクソン流の核家族(絶対核家族)は、個人主義的で、自由を重んじますが、平等には全く気を配らないからです。米国にはプロテスタントの新興宗派が多く存在していますが、その教義は、選ばれて天国に召される者と地獄に落とされる者を決定的に分けて、まさに不平等なビジョンを提示しています。それに加えて、教育による新たな階層化が高等、中等、初等と最終学歴によって人々をランク付けし、米国社会の格差をさらに拡大しました
前出書 P91/ 前出著者 ※一部中略等した
・アングロサクソンの人々の文化特性について。個人的には家族構造に加えて、キリスト教的な宗教的な価値観や環境も以下で述べられれている”創造的破壊”につながっていると思う。別の本だったと思うがアングロサクソンの社会の英国や米国だと、子が親と同じスタイルには限らないから、一世代で全く違う世界になることも不思議ではないといっていた。
”「創造的破壊」とは、自分が作り出したものを自分自身で破壊し、新しいものを作ることです。英国人と米国人はそれに長けているのです。しかし、それはフランス人、ドイツ人、日本人は難しい。・・中略・・英米は資本主義をうまく機能させる「創造的破壊」が得意なのか。その深い理由は、私の考えでは、英米の伝統的な家族形態、すなわち「絶対的核家族」にあります。絶対的核家族においては、子供は大人になれば、親と同居せずに家を出ていかなければならない。しかも、別の場所で独立して、親とは別のことで生計を立てていかなければならない。”
前出書 P112/ 前出著者 ※一部中略等した
・中国に対する分析。移住するとしても移住先に産業がないとなかなか仕事が厳しいな。エンジニアは別だが、自分にとっては中国やアジア等、二次産業が盛んな国の方が仕事を見つけやすいなと。逆にホワイトカラーの仕事や、サービス業などの三次産業しかない国となかなか仕事を見つけづらそう。
中国が”世界の工場”となり、欧米の多国籍企業が法外な利潤を得る一方で、先進各国で「産業空洞化」「賃金低下」「雇用喪失」「格差拡大」が生じ、この流れが行き過ぎました。
前出書 P155/ 前出著者 ※一部中略等した
・ドイツの一強の状況関するユーロへのコメント。産業力が強いドイツならともかくその周辺の相対的に産業が弱い国に行く際に、こういったユーロの不都合の面も見なければ。著者は当然ユーロ懐疑派。日本にいるとユーロ圏はめっちゃ旅行しやすくていいやんって思うけど、そこで仕事をしようとすると話は別。
単一通貨ユーロを無理に導入した結果、何が起きたか。ユーロ圏には、産業力が強い国もあれば、弱い国もあります。ユーロ導入以前には、弱い国は、自国通貨の価値を下げることで競争力を得て、生き延びることができました。しかし、ユーロ導入によって、それが不可能になった
前出書 P174/ 前出著者 ※一部中略等した
一旦以上であるが、他にも色々良いなと思う点はあった。
世界の構造の整理がほんの少し進んだ気になる。
他の著書も読んでみようと思う。
最後にトッド氏の家族類型を整理しておく(前掲書P233、P234参照)、今後の備忘メモ。
①絶対核家族:英米中心にみられる。子供は早くから親元を離れないといけない。結婚して独立家庭を持つ。遺産相続は親の遺言に依拠。親子関係は自由。兄弟間の平等は重要でない。
②平等主義核家族:フランス北部、パリ、スペイン、イタリア北西部などに多い。結婚すると独立までは①と同じ。相続は兄弟間平等(男女差別なし)
③直系家族:ドイツ、フランス南西、スウェーデン、日本、韓国など。通常は男子長子(時に末っ子)が跡取り。結婚後も彼が父の家に住む。相続も彼が全てする。親子関係は権威主義的(親に従う)。兄弟関係は不平等。
④共同体家族:男の子供が全員、親の家に住み続ける。結婚後においても。父親のもと皆同居。相続は平等。親との関係は権威主義的。※イトコ婚NGの外婚制が中国、ロシア、北インド、フィンランド、ブルガリア、イタリア中部トスカーナ。逆にイトコ婚OKの内婚制がアラブ地域、トルコ、イラン
お読みいただきありがとうございました。
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